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白貌の伝道師

Nitoroplus 虚淵 玄・著

ブレーカーが飛んだので、もう一回。
電子レンジと暖房を一緒に使ってはいけません。わかっていたのに、なにをしているのだ私は。

本当は「オペラ座の怪人」を読んだのでそっちとも思ったのですが、映画の方を見てから併せてにします。
今週中に見たいなー。

こんかいのこちらの作品は、同人誌の部類のようです。同人誌取扱店でしか売ってませんので、入手に手間がかかりました。
まあ、そういう内容ですね。ちょっと、市販では無理な内容でしょう。

見目麗しきエルフ族でありながら、善なる種族にあるまじき暴虐と非道を繰り返し、闇の邪法にすら手を染める。
その名もラゼィル。
……なんて読めばいいの?
ラじル? ラずいル? こまったのー。
そのラゼィルは残虐非道であり、強力な僕と強烈な数々の武器でもって、人間とエルフたちの世界を破壊していくのでした。
闇に犯される光、悪に引き裂かれる善。
はたしてその果てにあるのは、光の勝利ではなく、敗北とゆー至極もっともなお話。
勧善懲悪な話がすかっとして、面白いのは善が勝つことなわけですが、よく考えてみれば善がすべてよろしいというわけではなく、近頃の作品のなかには、至高神のいきすぎたやり方に異を唱えるものも多く見受けられてきました。
実際、今までないのが不思議なくらい。
現実はこういうものなのかもしれない。普通なら、愚かな人間、けれど人間には愛とか友情とか、素晴らしいものがある、と続くことに救いを見いだすのですが、そこにはいかない。

人間はあくまで愚かで、欲望に忠実。せっぱ詰まって、命の危機が迫っているのに、他人のことなど考えてられるか!
実際、自分の身に置き換えてみます。
崖にぶらさがって助けを求める人に手を差し伸べることは出来ても、悪に囲まれた弱者を助けに飛び出すことは出来ないに違いない。
醜い! なんて醜い!! そして、脆弱で弱すぎる!
他人の弱さを指摘できても、それを自ら行えるのか? 目をそらさずにいられるか!? 逃げずにいられるか!?

現実ではなく、ファンタジーくらい正義と光に溢れて欲しいという願望を見事に打ち砕いてくれて、いっそのこと清々しい。
これを期に世間一般にそういう話が溢れかえることはないでしょうけれど、ネット小説を探せばこの手のものはもしかしたら、ごろごろと出てくるのではなかろうか?

第一、ラゼィルは格好いい。自らの信念を貫く強さを持っている。
表紙のたまらん悪党面と比較しても、ヒロインのはずのアルシアは儚いが、可愛く見えない。
こういう構図を見ると(ここでは用意しないので検索してみてください)、歪んだ愛情が芽生えそうなものだが、その辺りの二人の心の交流はない。アルシアの存在が軽すぎる。アルシアは忠誠を誓うわけだけど、ラゼィルのために死ねるほど覚悟できてるとは思えない。
人間側は欲望と策略でエルフを侵略し、高潔なはずのエルフはただ高慢なだけだった。
それを考えると、なんてラゼィルは美しいのでしょう。輝いている。悪のはずが、完全なる悪が、中途半端な人間や光のうちに影を隠していたエルフに比べて、あまりにも美しい。

まあ、続編はないだろうなー。
悪の美酒に酔いたい方にお勧めです。
参考文献に、一つ紹介したい作品があります。
以下のタイトルは思いっきりネタばれなので、書くのは危険なのですが、まーいいや。
書いちゃえ!

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この作品でがーんと衝撃の来た方は、こちらの作品をお薦めいたします。
「ダークエルフ物語」
エンターブレインから全三巻、続編のアイス・ウィンドサーガも刊行中であります。
正直のこの著者の方は、この作品読んでるんじゃないかと思うんですが、後書きには一言も触れられておりませんでした。ただ、それらしい話はちらほら。
ラゼィルのお兄さんは二刀流だったし?
この作品を読むと、「伝道師」の世界観が広がります。
ダークエルフが主人公ですが、こちらのドリッズドはラゼィルとは違って自分の出自に思い悩み苦しんで、光を求めてダークエルフが支配する地下世界から旅立っていくお話。そのダークエルフ社会も大変似ておりますので、思わずにやりとしてしまうこと然り。
ドリッズドとラゼィルはそういう意味では、同じ設定なのに目的と性格がまったく違うという感じで対比が出来ています。
かたや光の世界に憧れ、かたやさらなる闇を求めて光の世界に旅立っていく。
ドリッズドはいいやつです。
そういう意味では、闇の世界で生まれたドリッズドが光明を見いだしていくというお話で、救われるお話です。
アイス・ウィンドサーガは全六巻の予定なので、私はそれまで我慢しています。

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