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ポーの話

可愛らしい男の子の童話のようなものだと思っていたけれど、ちょっと違う。

新潮社 いしいしんじ・著

辛いものは好きですが、すぐにお腹を壊します。
だから、本当は食べちゃいけないんだけど、食べちゃう。
っていうか、市販の辛いものとか、レストランとかだと、不自然に辛いと思う。
韓国料理とかインドカレーとか、辛くても逆に身体にいい気がします。次の日にお腹を壊すこともないし。
でも、本当に今日の四川麻婆豆腐丼は、……酷い。
腹の中をかき回されて、悶えています。
腸もきっと早く外に出したくて、悶えまくっているに違いない。

そんななかで読んだ、「ポーの話」。
あまたの橋が架かる町。眠る様に流れる泥の川。
太古から岸辺に住みつく「うなぎ女」たちを母として、ポーは生まれた。
やがて、稀代の盗人「メリーゴーランド」と知りあい、夜な夜な悪事を働くようになる。だがある夏、500年ぶりの土砂降りが町を襲い、ポーは広い世界に旅立っていくのでした。
善と悪、知と痴、清と濁のあわいを描くそうです。

著者の最高傑作ということですが、私はこの方の作品は初めてです。
善と悪……、と続くと思いだすのが「はてしない物語」。
善と悪、賢と愚、美と醜、アウリン。

登場人物たちに、名前があるのはポーただ一人です。
他の登場人物たちは、誰もがあだ名で呼ばれています。
泥川でうなぎをとっている、ポーの母親であるうなぎ女たちにも、体格の別はあっても個体の区別はされていません。それがまた童話的な雰囲気を醸し出しています。

ポーは、純粋な少年です。
ですが、その純粋さはあまりにも無垢にすぎて、他人を思いやることすら出来ません。
善悪の判断が区別が出来ないのです。そんなとき、盗みを覚えるのですが、そんな生活の中で彼は罪悪を覚えていきます。そして、それを償う方法も。もっとも、それはとても正しいとは思えないのですが。

そんな純粋なポーを育てたのが、うなぎ女たち。
彼女たちはとても学があるわけではありません。彼女たちは、言葉は話さず集団で生活しています。
大勢でポーを大切に愛情を注ぎ込んで育てていきます。
そのポーに盗みを教えるのが、女好きのメリーゴーランド。彼の妹のひまし油は、知識をポーに教えます。
そして、普段は兄をぼろくそに言うひまし油がメリーゴーランドに愛情を見せるのを不思議に思うのでした。

五百年ぶりの大豪雨に、ポーは流される様にして旅に出ます。
その道連れは、ちょっとおつむの足りない天気売り。鏡を覗いて天気を占ってはほどこしをうけて生活しています。
そんな彼も、ポーとは違って優しさを持ち合わせています。
やがて、ポーにとっては大切な助言者となるのですが……。

二人は旅の途中、狩人の老人と少年の小屋に寄ったり、鳩を飼育している夫婦に捕らわれたりしながら、海へと旅を続けていきます。

ポーは何事にも頓着しません。思った通りに正直に口にしますが、それは相手を思うことを知らないだけ。
善と悪を知らないだけなんです。
ポーもやがてそれを学んでいき、世の中の仕組みのようなものが見えてきます。
本当の「償い」がどんなことなのかを学びます。

やがて海に還っていったポーは、世界のなにもかもが繋がっていることに気付き、その繋がりに歪みを見ることが出来る様になりました。
ポーはその歪みを元通りに戻すことで、たくさんの命を救うことが出来る様になりました。

「誰も彼もが、罪悪感を抱いて生きている」
それを知ったからって、私の罪悪感が拭われる訳じゃない。
私はなにか犯罪を犯しているわけではないけれど、いつも誰かを傷つけているし、迷惑をかけている。後のことを思えば、苦痛だし、かといってのど元過ぎればそれからも解放される。
幸い、他人の人生を左右したことがないことくらい。それだって、実は知らないだけで、知らないところで誰かが苦しんでいるのかも知れない。

「泥のなかをのたくるように、つぐなう方法を探して生きていく」
それしかない。他人がそうして、罪悪感を抱いて苦悩しながら生きていくことを知っていたからって、私自身がその罪悪感から逃れられるはずもない。

「いきているうちがつぐないです。ふかいふかいそこで、まちがえないようにいきていくのが、ほんとうのつぐないですよ」
ポーは償いながら生きていきます。最後はどうなったんだろう? 最後のあれは、どういう意味だったんだろう?

私は生きているけれど、なにか償っているわけでもない。ボランティアをしているわけでもないし、募金に大金をつぎ込むわけでもない。
私にもなにかの歪みが見えて、それをただすことが出来たらいいのに。

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ポーの話 いしい しんじ 新潮社 2005-05-28 売り上げランキング : 4,411Amazonで詳しく見る by G-Tools 最近ちょっと気になりつつあるいしいしんじさんの『ポーの話』を読みました。正直困った、???が頭の中で渦まいて、読みすすめるに従ってますますもぁーっと霧がかかったような世界が作られていく。あらすじを説明するのも難しい・・・ポーっていう、うなぎ女の子供がね、大きな身体で黒いんだけど、泳ぎが得意で、いつも泥川で泳いでいるのね。そこで、ながれているものを拾ってるの。... [Read More]

Tracked on August 19, 2005 at 09:54 AM

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