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サウスバウンド

面白かった。久々に面白かった。まだまだ世の中にはこうしたものがあるのですねえ。

角川書店 奥田英朗・著

今日は、ニコール・キッドマンの「奥様は魔女」を観てきたのですが、そっちはどうしたって霞んでしまいました。少々、テンポが悪いかな。ニコール・キッドマンは美人だけど、相手役の俳優の演技がちょっと過剰すぎでひきぎみだったかも~。
やっぱり、奥様は魔女は、ドラマのほうが面白いかな~。

この小説も、映画化になったりするんだろうか?
これは売れるのではないか、などと余計なことを思ったりもした。とにかく、面白かったんだから。
型破りな父に翻弄される家族を、少年の視点から描いた小切なわけですが、父親が主人公だったら、もっと別の話になっちゃったんじゃないのかなあ。
父は一郎、息子は二郎。確かにかわった父親だ。しかも、無職だし。おまけに、元過激派。
一家はひっそりと東京で暮らしているのだけれど、父親の型破りッぷりに、平穏は毎日は崩れていくわけで、その辺はちょっと子供は可哀想だし、世間一般的に観ても理不尽なんだろうと思った。

第一部は、東京での二郎少年の生活が語られる。
最初は本当に、反社会的な父親に振り回されつつも、学校生活を満喫しているわけです。
いわゆる思春期の悩みって奴ですかね。
行動派の親友がいて、インテリなのがいて、秀才がいて、片親の不良少年がいたりして。そんな彼らの友情物語があって。
二郎は、家出や、いじめ、自分に金持ちの祖父母がいることなど、数ヶ月間に劇的な経験をしてしまい、さらにさらに大変な事件が。
お父さんは年金を払わないし、まだ小学生なのに中学生の不良に目を付けられて、因縁を付けられる。
かといって、大人は頼りにならない。
さらに、お父さんの知人のアキラおじさんが居候になる。
アキラおじさんは、格好いい。お父さんと同じなんだけど、料理が得意で鍛えてる感じ。危険な匂いをさせているけれど、いい兄ちゃんって感じ。だけど、それだけじゃ終わらなかった。
アキラおじさんは、二郎の敵をいためつけて、おまけに警察沙汰の事件を起こして逮捕されてしまう。
少年二郎は、理不尽な運命に翻弄されて、人生をめちゃくちゃに……。
なんて展開に、ずっとどきどきしっぱなしでした。そのうち、二郎は家出ごろごろしているだけの理不尽な父親を刺しちゃうんじゃないかって、そんな風にはらはらしていました(被害妄想)。
だって、最近そういう暗い小説が多いんです。そう思いませんか?
なんで、娯楽のための読書なのにこんな暗い話を読まなくちゃいけないんだろうかって。
しかも、そういうのなんたら大賞受賞だとかって、なんなんだ一体?
そりゃ、私もそういうのを読んで、暗い喜びに浸ったりもしますが、立て続けだともう嫌になる。

正直なんだ、またそういう話なのかと思った。
社会問題って奴なの? 社会に適応できない人間が、問題起こす話なのですか?
昨日の「女王様と私」も、ひきこもりの四十オタクが事件を起こす話だったけれど。
家庭崩壊か?
一家は、東京に住んでいられなくなり、沖縄(父の故郷)に引っ越すことに。
もっと、健全な話かと思った。父親が変わってるってだけで、元過激派だったなんて……!!
そこにはもちろん、父一郎の信念もあるわけで、そこはちょっと格好よかったかな。
事件を起こしたアキラおじさんを庇ったりもしていたし、けれど母さくらの諦観の表情は可哀想。

それはそれとして、二郎少年の友情物語が展開されるわけですが、それが今時じゃちょっと珍しいくらい、感動的だったりして。まるで、石田衣良の「4TEEN」みたいに感動しちゃったりなんかして。
子供は結構したたかだし。
だから、結局読まされてしまったわけで……。

第二部は、沖縄生活。
姉の洋子は、東京で居残り。どうやら不倫しているらしい。相手の男と結婚すると息巻いているが、今までの経験上、捨てられる展開しかあり得なくって、ちょっといたたまれない。つーか、先読みしすぎな私。
妹の桃子は、原始的な生活にうんざり気味。
とはいえ、二郎も桃子も沖縄のさらにはなれて、西表島の野性的な生活になじんでいくわけですね。
第一部では、一郎の破天荒を咎めつつも、制御しきれない夫の手綱をなんとか握っていた感のある、未亡人っぽい雰囲気の妻さくらも、ここでは開放的になり、吹っ切れて明るくなった。
一郎も野生児になり、まるでターザン(?)。東京ではごろごろしていたのに、畑仕事に精を出し、野生動物を狩りに出る始末。船を運転して、魚まで捕ってくる。
さらに、島の人々は親切で、食べ物など買わなくても、誰かが持ってきてくれる。
電気も水道もないけれど、そんな眩しい太陽と、透き通る海の風に、二郎も桃子もすっかり島になじんでいくわけです。それこそ「南の国から」みたいな~、感じになるのかと思いきや、案外ほっとしながら読んでました。
とはいえ、そこは一郎さん。やはり、なにもないわけがない。
リゾート開発を進める一派と一悶着有り、昔の血が騒ぎ出す。
男に捨てられた姉の洋子までやってきて、ついに一家が一致団結して立ち上がる!
って、すっげー、展開。
とはいえ、やはり子供たちは避難させて、夫婦二人(プラス変な外人)で国家権力に立ち向かうことに!
父はやはり、英雄だった。そして、母はジャンヌ・ダルクだった。
結局、二人は島にいられなくなり、楽園目指してランデブー。
子供たちは親切な人々に包まれて、島に残ることに。
夫婦は子供たちに迎えに来ることを約束して、船で旅立っていくのでした。
本当に迎えに来るのかなあ……。

父さんは、格好良かった。自分が馬鹿だと言うことはわかっていた。世間に流されて生きていくほうが、賢いことはわかっていた。けれど、自分を貫くことしかできない不器用な男だった。そして、それを実行できる強さを持っていた。東京にいた頃と違って、言うことが格好いい。東京があまりにも型にはまった世界だったからだろうか。

その父親像、男性像は、どこか象徴的に感じるのは、英雄だからなのだろうか。
人間味溢れるというには、やはりちょっと逸脱しすぎているかも。
文句なしに面白い小説。
沖縄の第二部があって良かった。久しぶりにすっごい爽快な読後感だった。
すっきりした。

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