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遠い音

新潮クレスト・ブックスをめぐっての座談会を読んで。

遠い音
新潮社 フランシス・イタニ・著

新潮クレスト・ブックスの小冊子を見て、そこに作家さんたちの座談会が乗っていまして、それを見て購入した本です。何を買ってついてきた冊子だったけ?
角田光代、いしいしんじ、島本理生の三名でしたかね。
しかし、いしいしんじの「ポーの話」しか読んでないんですけど。
(それにしても、角田光代がテレビに出て、感想文を客観的に書くと小説になりますって、本当なのかしら??)
「対岸の彼女」はあまり興味がなかったり、でも「ナラタージュ」は興味有り。
今回の「遠い音」は、いしいしんじが推薦していましたので、なんとなく買いました。
それから角田光代推薦の「停電の夜に」を合わせて購入。

第一次世界大戦が迫り来るなか、少女は五歳で聴覚を失った。
静寂の大地カナダで戦争の生気を生き抜いた女性の半生。音のない世界の豊かさを、実話を元に描いた感動の大河長編。

ってことだったので、聴覚を失った女性の生涯を描いたのかと思ったのですが、かなり分厚い本で、ちょっと怯みました。
けれど、重点は彼女の夫の戦争中の体験にかかっているかな。紹介文とかに戦争の話があることは書かれているのに、私は全然そういう風に思わずに読んでしまった……。
いしいしんじも、
「主人公の静寂の世界と不気味な音に溢れた戦場と、その二層が身体の置くのほうに積み重なっていく。圧倒的な読書体験でした」
と言っているのだから。
でも、私は夫の戦場の悲惨な体験よりも、その静寂の世界で生きる主人公の姿をもっと追っていきたかったな。
なんとなく映画の「ロング・エンゲージメント」を思い出しました。
同じ時代だったと思うんですけど、映像の雰囲気が似ていると思いました。エンゲージメントの方も、戦争で行方不明になった恋人を探すのに、戦場の回想がたびたび挿話されてきて、それが今回のこの本の内容とも交差して面白かったかも。

でも、私はやっぱりヒロインのグローニアにもっと焦点を合わせて欲しかった。
いや、もうこれ以上ないってくらいに彼女の話なんだけど、戦争に行った彼の話は正直どうでも良かった。
耳の聞こえない彼女は、それが当たり前なわけで、その世界で、耳の聞こえる人々の唇を読むことで生活している。
もごもご口を動かしたり、口元が見えなかったり、複数の人たちが同時に話をしたりすると、彼女たちは話を理解することが出来なくなってしまう。
彼女は喋っている人に意識を集中させる。その度合いは、普通の人とは違う。彼女のそうした話を聞くという姿勢は、耳が聞こえる人と違って、遙かに重要なものであり、普通の人たちが見ても、自分の話を聞いてくれていると感じ、そのことで安堵することになるのだろう。
電話などは使えないのだろうけれど、今はメールがあるとはいえ、話は必要だと思う。
私などが甘えているのは、友人からの電話でも愚痴が続くと上の空になってしまうこと。
それでも彼女たちは、話を拾い、かすかな空気の振動や相手の示す形から、言葉を完成させようとにしようと、彼の話に意識を集中させるのだろう。脇目もふらずに。

この物語は、いしいしんじが言うとおり、戦争の悲惨な音が溢れている。
いのちからがら戦争から戻ってこられたとしても、心が病んでいたりする。
そうした戦争から傷ついて返ってきた知人を前にしながらも、主人公は戦争に行った夫の帰りを切実に待っている。

そんな彼女が言葉を勉強したりする姿や、会話する描写は素晴らしい。
雰囲気があるよね。

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